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上田秀人
上田秀人を模倣し、武士の文化を描いた完全オリナル時代小説『刀影 ―武士の世を斬る者―』第五十三章
第五十三章 砲声の向こう 三発目の砲口から、白煙が上がった。 「伏せろ!」 誰かの声と同時に、砲弾が海面を走った。 異国船の左舷。 船腹。 二十三人の日本人がいるという場所。 新之介は、何もできずに弾道を目で追った。 砲弾は船腹へ... -
上田秀人
上田秀人を模倣し、武士の文化を描いた完全オリナル時代小説『刀影 ―武士の世を斬る者―』第五十二章
第五十二章 白旗の男 戸田家上屋敷の船着き場には、二艘の舟しか残っていなかった。 一艘は、撃たれた北見帯刀を医師のもとへ運ぶ。 もう一艘は、江戸湾へ向かう。 「私は残る」 戸田備前守が言った。 失った声は、まだ完全には戻っていない。 ... -
上田秀人
上田秀人を模倣し、武士の文化を描いた完全オリナル時代小説『刀影 ―武士の世を斬る者―』第五十一章
第五十一章 生きた声 銃声は、狭い地下道の中で何度も跳ね返った。 耳の奥が痺れる。 火薬の臭い。 消えた灯り。 誰かが石床へ倒れる音。 「殿!」 北見帯刀の声だった。 「動くな!」 新之介は暗闇へ叫んだ。 「誰も動くな!」 すぐ近く... -
上田秀人
上田秀人を模倣し、武士の文化を描いた完全オリナル時代小説『刀影 ―武士の世を斬る者―』第五十章
第五十章 声の間 戸田家上屋敷から上がる黒煙は、近づくほど太く見えた。 火の手は屋敷全体へ回ってはいない。 燃えているのは、北西の一角。 主屋から渡り廊下で隔てられた、小さな平屋だった。 「あれが声の間です」 宮坂孫六が言った。 新... -
上田秀人
上田秀人を模倣し、武士の文化を描いた完全オリナル時代小説『刀影 ―武士の世を斬る者―』第四十九章
第四十九章 四つの鐘 鐘は、江戸の四方から響いていた。 一つ目は西。 西徳寺。 第一冊を置いた土蔵の方角。 二つ目は北。 戸田家の下屋敷。 街道寺から移した第二冊を、五者の封で預けた場所。 三つ目は南。 海防掛の御用蔵。 盤洲... -
上田秀人
上田秀人を模倣し、武士の文化を描いた完全オリナル時代小説『刀影 ―武士の世を斬る者―』第四十八章
第四十八章 千人の声 蔵前へ近づくにつれ、鐘の音は一つではなくなった。 北から。 西から。 川沿いから。 町の辻ごとに別々の鐘が鳴り、それぞれの場所で人の声が上がっている。 「米を出せ!」 「御蔵を開けろ!」 「隠した米を民へ返せ!」 ... -
上田秀人
上田秀人を模倣し、武士の文化を描いた完全オリナル時代小説『刀影 ―武士の世を斬る者―』第四十七章
第四十七章 声を持たぬ舟 小名木川の水門を抜けると、流れが急に速くなった。 潮が引き始めている。 文吉の早舟は、その流れへ乗って東へ逃げていた。 新之介たちの舟との距離は、二十間ほど。 遠くはない。 だが追いつける距離でもなかった... -
上田秀人
上田秀人を模倣し、武士の文化を描いた完全オリナル時代小説『刀影 ―武士の世を斬る者―』第四十六章
第四十六章 偽りの上意 御船蔵へ向かう舟は、川幅に似合わぬほど小さかった。 池守から借りた舟を人足に担がせ、不忍池から東の水路へ下ろしたのである。 舟に乗ったのは、新之介、半九郎、源太郎、矢倉勘蔵。 櫂を握るのは、近くの船宿から呼び... -
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上田秀人を模倣し、武士の文化を描いた完全オリナル時代小説『刀影 ―武士の世を斬る者―』第四十五章
第四十五章 白煙の弁天堂 不忍池の水面を、白い煙が這っていた。 霧に似ている。 だが朝の冷気から生まれたものではない。 水へ触れた草が黒ずみ、岸辺の小魚が腹を上へ向けて浮かんでいる。 煙を吸った鴨が一羽、水面を激しく羽ばたいた。 ... -
上田秀人
上田秀人を模倣し、武士の文化を描いた完全オリナル時代小説『刀影 ―武士の世を斬る者―』第四十四章
第四十四章 火薬蔵の炎 火矢は、火薬蔵の屋根へ深く突き刺さっていた。 矢尻には油を含ませた布が巻かれている。 炎はまだ掌ほどだったが、乾いた板へ舌を伸ばし始めていた。 「梯子を!」 新之介が叫ぶ。 「井戸から水を運べ!」 役宅の者たち...