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上田秀人
上田秀人を模倣し、武士の文化を描いた完全オリナル時代小説『刀影 ―武士の世を斬る者―』第八十五章
第八十五章 記録を殺す者 江戸へ戻る舟は。 来た時より速かった。 だが。 新之介は。 一度も。 「急げ」 とは言わなかった。 水野が何度か船頭を見る。 そして。 何も言わない。 新之介が気づいた。 「水野様」 「何だ」 「今」 「急... -
上田秀人
上田秀人を模倣し、武士の文化を描いた完全オリナル時代小説『刀影 ―武士の世を斬る者―』第八十四章
第八十四章 国の代替 「誰にも」 ジョナサン・ケイは言った。 「頼まれていない」 黒船の高い舷から。 江戸湾を見下ろしながら。 「だから」 「私は」 「そなたたちと同じ間違いを」 「したのかもしれない」 新之介は。 すぐには答えなかった。... -
上田秀人
上田秀人を模倣し、武士の文化を描いた完全オリナル時代小説『刀影 ―武士の世を斬る者―』第八十三章
第八十三章 三十一番の名中立の舟は。 江戸湾の真ん中で。 ゆっくり揺れていた。 日本側。 榊原新之介。 徳川家定。 水野隼人正。 鷹見宗一郎。 記録役の清太郎。 通詞。 米利堅側。 士官二名。 通訳。 弥十郎。 そして。 ... -
上田秀人
上田秀人を模倣し、武士の文化を描いた完全オリナル時代小説『刀影 ―武士の世を斬る者―』第八十二章
第八十二章 海の御影 江戸湾から響いた砲声は。 しばらくして止んだ。 だが。 日本橋のざわめきは止まらなかった。 「戦になるのか」 「米利堅だってよ」 「黒い船が四隻」 「浦賀が焼かれたらしい」 「いや、品川まで来てる」 「将軍様が逃げた... -
上田秀人
上田秀人を模倣し、武士の文化を描いた完全オリナル時代小説『刀影 ―武士の世を斬る者―』第八十一章
第八十一章 千の声 夜が明けきる前。 日本橋には、もう人がいた。 魚を運ぶ者。 荷を担ぐ者。 店先を掃く者。 寝ていない火消。 橋の袂で茶を沸かす女。 江戸という町は。 将軍が一人か二人か分からなくても。 朝になれば動く。 「不... -
上田秀人
上田秀人を模倣し、武士の文化を描いた完全オリナル時代小説『刀影 ―武士の世を斬る者―』第八十章
第八十章 最初の偽名 「松平左京」 捕らえられた男は言った。 「始帳に残る家斉公の署名は」 「そなた自身の筆だ」 川風が吹く。 消え残った三つの灯りが揺れる。 松平左京は肩の傷を押さえられたまま、男を見ていた。 「……何を申している」 「忘... -
上田秀人
上田秀人を模倣し、武士の文化を描いた完全オリナル時代小説『刀影 ―武士の世を斬る者―』第七十九章
第七十九章 刀を持つ者 小名木川へ向かう道の途中。 新之介は、まだ刀を持っていなかった。 腰には空の鞘すらない。 「本当に拾うつもりか」 玄斎が問う。 「分かりません」 「川へ捨てた場所は覚えておるのだろう」 「おおよそ」 「なら探せ」 ... -
上田秀人
上田秀人を模倣し、武士の文化を描いた完全オリナル時代小説『刀影 ―武士の世を斬る者―』第七十八章
第七十八章 捨てられた者 再起館へ戻る舟の中で、新之介は一度も「急げ」と言わなかった。 水を切る櫓の音。 夜の川。 遠くの火。 江戸は、何も知らぬように動いている。 米を運ぶ舟。 夜回り。 橋の上の人影。 どこかで子どもの泣く声。... -
上田秀人
上田秀人を模倣し、武士の文化を描いた完全オリナル時代小説『刀影 ―武士の世を斬る者―』第七十七章
第七十七章 将軍を終わらせる者 「徳川家を残すために」 徳川家定は言った。 「徳川将軍を、私の代で終わらせます」 誰も、すぐには声を出さなかった。 家慶甲。 家慶乙。 二人とも同じ顔で。 同じように息子を見ている。 だが。 その表... -
上田秀人
上田秀人を模倣し、武士の文化を描いた完全オリナル時代小説『刀影 ―武士の世を斬る者―』第七十六章
第七十六章 作られた見捨役 御座所の中。 本物の真崎半九郎とされる男は、新之介の隣に立っている。 その一方。 再起館では。 もう一人の「真崎半九郎」が御影宗太郎を斬った。 「宗太郎殿の傷は」 新之介が問う。 使者は息を整えながら答...