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上田秀人
上田秀人を模倣し、武士の文化を描いた完全オリナル時代小説『刀影 ―武士の世を斬る者―』第七十五章
第七十五章 見捨役 江戸城へ戻る舟の上で、真崎玄十郎は一言も話さなかった。 半九郎も同じだった。 ただ。 父と息子は、先ほどまでとは違い、同じ舟の同じ側に座っている。 それだけを新之介は見た。 問いただすのは後でよい。 戻る場所を... -
上田秀人
上田秀人を模倣し、武士の文化を描いた完全オリナル時代小説『刀影 ―武士の世を斬る者―』第七十四章
第七十四章 逃げなかった言葉 扉が閉じる音を、真崎玄十郎は黙って聞いていた。 半九郎も動かない。 十五年。 死んだと思っていた父。 死んだことにしていた父。 自分の名を十六人の盾に使い。 それを告げる約束から逃げ。 別の名で生き... -
上田秀人
上田秀人を模倣し、武士の文化を描いた完全オリナル時代小説『刀影 ―武士の世を斬る者―』第七十三章
第七十三章 父の名 朝風丸からの使者が告げた言葉を、半九郎は何度も頭の中で繰り返していた。 ――自分を真崎玄十郎と名乗る老人がいる。 ――だが、その老人は「私は半九郎の父ではない」と申している。 「どこにおります」 半九郎が問う。 「品川... -
上田秀人
上田秀人を模倣し、武士の文化を描いた完全オリナル時代小説『刀影 ―武士の世を斬る者―』第七十二章
第七十二章 十七人目 「十七人目の名は――真崎半九郎」 お菊の声が、石室に残った。 半九郎は動かなかった。 新之介も。 玄斎も。 誰も、すぐには続きを問わなかった。 半九郎がようやく口を開く。 「……私ですか」 「名は」 お菊が答えた。 ... -
上田秀人
上田秀人を模倣し、武士の文化を描いた完全オリナル時代小説『刀影 ―武士の世を斬る者―』第七十一番
第七十一番 十番の千代 御記録所の地下は、煙の匂いがまだ残っていた。 先ほど燃えた書架。 濡れた廊下。 壁を伝う水。 その奥。 普段なら紙や文箱を運ぶ者しか使わない狭い石段を、新之介は駆け下りていく。 「こちらです!」 先を走る若... -
上田秀人
上田秀人を模倣し、武士の文化を描いた完全オリナル時代小説『刀影 ―武士の世を斬る者―』第七十章
第七十章 三人の新之介 大手門の前には、二人の榊原新之介が立っていた。 一人は灰色の羽織。 もう一人は濃紺。 顔。 背丈。 髪。 肩の幅。 立ち方。 遠目には、どちらも新之介だった。 そして地下から上がってきた本物の新之介を見... -
上田秀人
上田秀人を模倣し、武士の文化を描いた完全オリナル時代小説『刀影 ―武士の世を斬る者―』第六十九章
第六十九章 消された十六人 将軍の顔を剥いだ男は、新之介をまっすぐ見ていた。 「榊原家にも、十五年前に一人入れられた」 「その者は今も生きている」 新之介はすぐには問わなかった。 玄斎なら、早く名を聞けと言っただろう。 だが今。 目の... -
上田秀人
上田秀人を模倣し、武士の文化を描いた完全オリナル時代小説『刀影 ―武士の世を斬る者―』第六十八章
第六十八章 殺した名 大手門の前で、誰も動かなかった。 川辺主馬の言葉だけが残っていた。 「宗一は、二十年前に私が殺した」 新之介は川辺を見た。 「誰を殺したのです」 「今、申した」 「御影宗一を?」 「そうだ」 「顔を見ましたか」 川辺... -
上田秀人
上田秀人を模倣し、武士の文化を描いた完全オリナル時代小説『刀影 ―武士の世を斬る者―』第六十七章
第六十七章 政をつかさどる者 高札の最後の一行を、清太郎はもう一度読んだ。 「――本日より、一時政務を預かる者を置く」 そこで一度息を止める。 「――鷹見静山」 再起館の広間に、重い沈黙が落ちた。 玄斎が最初に口を開いた。 「……誰だ」 誰... -
上田秀人
上田秀人を模倣し、武士の文化を描いた完全オリナル時代小説『刀影 ―武士の世を斬る者―』第六十六章
第六十六章 二人の家慶 門の外にいる男も、徳川家慶の顔をしていた。 左脇腹へ手を当て、 「二十年前、曲直瀬玄朴。そなたが残した針だ」 と、同じ声で言った。 再起館の中にいる家慶が、ゆっくり門へ近づく。 二人の距離は十間ほど。 白灰で...