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西村京太郎
西村京太郎を模倣し、『JR福知山線脱線事故』を題材にした小説、「終着駅の迷宮」(ラビリンス)第三十五章・第三十六章
第三十五章 暗闇に沈む証言 大阪地方裁判所の法廷は、梅雨の湿気を含んだ空気で重く淀んでいた。天井に並ぶ蛍光灯は白々と光り、傍聴席を満たす人々の顔を青白く照らし出す。そのなかで、被告席に座る男――山崎は、硬直した表情を崩さずに前を見据えてい... -
西村京太郎
西村京太郎を模倣し、『JR福知山線脱線事故』を題材にした小説、「終着駅の迷宮」(ラビリンス)第三十三章・第三十四章
第三十三章 法廷に立つ影 四月の曇天が、まるで灰色のカーテンのように大阪の街を覆っていた。 地方裁判所の玄関前には、朝から報道陣と傍聴希望者の長蛇の列ができていた。人々の視線は一様に、この日初めて公開される福知山線脱線事故に関連する刑... -
西村京太郎
西村京太郎を模倣し、『JR福知山線脱線事故』を題材にした小説、「終着駅の迷宮」(ラビリンス)第三十一章・第三十二章
第三十一章 灰色の迷路 春の午後、東京地方裁判所の廊下には張り詰めた空気が漂っていた。鉄製のドアが静かに閉じられ、傍聴人たちのざわめきはやや遠のいていった。これまで長きにわたって続いた公判も、いよいよ終盤に差しかかろうとしていた。裁判長... -
西村京太郎
西村京太郎を模倣し、『JR福知山線脱線事故』を題材にした小説、「終着駅の迷宮」(ラビリンス)第二十九章・第三十章
第二十九章 取り残された真実 大阪地方裁判所の法廷に、午後の柔らかな光が斜めに差し込んでいた。 窓越しに射し込む陽射しは、そこに集う人々の顔に微妙な陰影を落とし、傍聴席に座る遺族たちの表情をいっそう沈痛に見せていた。 裁判は終盤を迎え... -
西村京太郎
西村京太郎を模倣し、『JR福知山線脱線事故』を題材にした小説、「終着駅の迷宮」(ラビリンス)第二十七章・第二十八章
第二十七章 虚像の終焉 東京地方裁判所。 秋雨に濡れた法廷の窓越しに、どんよりとした雲が垂れ込めていた。裁判は大詰めを迎えていた。JR福知山線脱線事故をめぐる一連の真相が、いよいよ司法の場で断罪されるのである。 傍聴席は、遺族、報道関係... -
西村京太郎
西村京太郎を模倣し、『JR福知山線脱線事故』を題材にした小説、「終着駅の迷宮」(ラビリンス)第二十五章・第二十六章
第二十五章 消された線路 東京駅の午後は、混雑と静寂が同居していた。大勢の乗客が行き交うコンコースの中、十津川警部は亀井刑事とともに、新幹線改札口の横に立っていた。 彼らを迎えに現れたのは、国土交通省鉄道局の若手官僚・北川俊介だった。三... -
西村京太郎
西村京太郎を模倣し、『JR福知山線脱線事故』を題材にした小説、「終着駅の迷宮」(ラビリンス)第二十三章・第二十四章
第二十三章 残されたダイヤ 薄曇りの空の下、兵庫県警捜査一課の刑事・真鍋は、尼崎駅近くの線路脇に立っていた。事故から数ヶ月が過ぎ、現場の空気は表面上は落ち着きを取り戻していたが、真鍋の胸中は依然として重いままだった。 線路に並行して設... -
西村京太郎
西村京太郎を模倣し、『JR福知山線脱線事故』を題材にした小説、「終着駅の迷宮」(ラビリンス)第二十一章・第二十二章
第二十一章 証言の重み 東京地方裁判所の法廷。 重々しい空気の中、傍聴席には遺族、記者、そして関係者たちが詰めかけていた。 裁判長が木槌を打ち下ろすと、ざわめきはぴたりと止んだ。 「それでは、証人・藤原浩一氏、入廷してください」 扉が... -
西村京太郎
西村京太郎を模倣し、『JR福知山線脱線事故』を題材にした小説、「終着駅の迷宮」(ラビリンス)第十九章・第二十章
第十九章 証言台 大阪地方裁判所の刑事第2法廷は、開廷前から張り詰めた空気に包まれていた。遺族、報道関係者、傍聴人――その視線はすべて、証言台に立つ男へ向けられている。 藤原浩一。かつてJR西日本技術戦略本部に所属し、事故後のデータ改ざんに... -
西村京太郎
西村京太郎を模倣し、『JR福知山線脱線事故』を題材にした小説、「終着駅の迷宮」(ラビリンス)第十七章・第十八章
第十七章 逆流する証言 梅田の喧噪は、昼下がりにも関わらず重く淀んでいた。高層ビルの谷間を抜ける湿った風は、雨上がりの舗道に残る水たまりを波立たせ、その揺らぎが探偵・片桐の胸中を写すようだった。 ――これで本当に、真相に近づけるのか。 ...