東野圭吾を模倣し、元首相暗殺事件を題材にしたオリジナル小説『二発目の空白』第一章

目次

第一章 七月八日の音

1

その音を聞いた瞬間、三崎遼一は花火だと思った。

乾いた音だった。

夏祭りで聞く花火とは少し違う。もっと低く、空気そのものを殴りつけたような音だった。

だが、人間というものは、自分の理解できない出来事に遭遇すると、まず理解できるものへ置き換えようとする。

だから三崎は、花火だと思った。

七月八日。

午前十一時半を少し過ぎたころだった。

奈良の空は青かった。

梅雨が明けたばかりの空には、薄い雲が浮かんでいる。駅前には買い物客や通勤途中らしい人々が行き交い、その一角だけが不自然なほど人で膨らんでいた。

選挙演説だった。

三崎は政治に特別な興味があるわけではない。

むしろ嫌いなほうだった。

新聞も政治面はほとんど読まない。選挙には行くが、それは権利を行使するというより、行かなければ妻に小言を言われるからだった。

その日も偶然だった。

仕事で大阪へ向かう途中、大和西大寺駅で乗り換える予定だった。それだけのことである。

人だかりを見つけ、誰か有名人でも来るのかと思った。

「安倍さんや」

隣にいた老人が言った。

「元総理の?」

三崎が訊くと、老人は嬉しそうに頷いた。

しばらくすると、本当に安倍晋三元首相が現れた。

テレビで何百回も見た顔だった。

実物を見ると、思っていたより大きく感じた。

三崎はスマートフォンを取り出した。

家に帰ったら妻に見せよう。

その程度の気持ちだった。

安倍元首相がマイクを握った。

拍手が起きた。

三崎もつられて拍手した。

そして数分後。

最初の音がした。

ドン。

三崎のスマートフォンの画面が大きく揺れた。

「何?」

誰かが言った。

安倍元首相も振り返ったように見えた。

時間にすれば、ほんのわずかだった。

しかし三崎には、その数秒が奇妙に長く感じられた。

人々がまだ状況を理解していない。

逃げる者もいない。

悲鳴もない。

ただ、全員が同じ疑問を抱えていた。

――今の音は何だ?

そして。

二度目の音がした。

今度は誰も花火だとは思わなかった。

悲鳴が上がった。

人が動いた。

誰かが走った。

誰かがしゃがんだ。

三崎の手からスマートフォンが落ちた。

画面がアスファルトに当たった。

それでもカメラは撮影を続けていた。

青い空。

人々の脚。

道路。

倒れた自転車。

そして、何人もの男たちが一人の人物に飛びかかっていく姿。

三崎は動けなかった。

頭の中で、何かが繰り返されていた。

二発。

二発だった。

だが、そのときの三崎には知る由もなかった。

その二つの音の間にあった数秒間が、四年後、一人の男を死なせることになるなど。

2

四年後。

奈良県警捜査一課の刑事、真壁修司は、机の上に置かれた封筒を見つめていた。

茶色い、ごく普通の封筒だった。

差出人の名前はない。

郵便番号も住所もない。

つまり郵送されたものではなかった。

「誰が置いた?」

真壁が訊いた。

向かいの机に座っている若い刑事、野村亮介が首を振った。

「わかりません」

「わからない?」

「朝来たら、そこにあったそうです」

「ここは捜査一課だぞ」

「はい」

「喫茶店じゃない」

野村は苦笑した。

真壁は笑わなかった。

県警本部の、それも捜査一課の机に、身元不明の人間が封筒を置けるはずがない。

内部の人間。

そう考えるのが自然だった。

封筒の表には、黒いボールペンで五文字だけ書かれている。

真壁修司様。

筆跡は几帳面だった。

真壁は手袋をつけ、封を切った。

中には一枚の紙が入っていた。

印刷された文章だった。

たった二行。

真壁はそれを読んだ。

そして眉をひそめた。

《あなたたちは、一発目を調べていない。》

《二発目だけを見ていた。》

野村が横から覗き込んだ。

「何ですか、これ」

「俺が訊きたい」

「いたずらでしょうか」

真壁は答えなかった。

もう一度文章を見る。

一発目。

二発目。

それだけなら意味はいくらでも考えられる。

しかし真壁には一つしか思い浮かばなかった。

四年前の七月八日。

大和西大寺駅前。

安倍晋三元首相銃撃事件。

日本中が知っている事件だった。

犯人は現場で取り押さえられた。

動機も明らかになった。

裁判も行われた。

社会に巨大な波紋を広げた事件だった。

少なくとも、世間ではすでに「何が起きたのか」は整理されたことになっている。

真壁自身も捜査に参加していた。

当時四十二歳。

現場周辺の映像解析班の指揮を執っていた。

防犯カメラ。

報道映像。

市民が撮影したスマートフォン動画。

何百という映像を見た。

何度も。

何度も。

夢にまで出てきた。

だからわかる。

あの日、最初の発射から次の発射までには、短い間隔があった。

その空白を、犯人は動いた。

警護員も動いた。

元首相も動いた。

群衆も動いた。

すべて映像に残っている。

「一発目を調べていない……」

真壁は呟いた。

「どういう意味でしょう」

野村が訊いた。

「知らん」

真壁は紙を封筒に戻した。

その瞬間、携帯電話が鳴った。

内線だった。

「真壁です」

『捜査一課長がお呼びです』

「今?」

『至急とのことです』

真壁は電話を切った。

嫌な予感がした。

刑事を長くやっていると、予感というものを信用するようになる。

超能力ではない。

経験の蓄積だ。

いつもと違う声。

いつもと違う呼び出し方。

いつもと違う沈黙。

そうした微細な違いを脳が無意識に拾い上げ、「嫌な予感」という形で知らせてくる。

真壁は封筒を引き出しに入れた。

「行ってくる」

「はい」

三歩歩いたところで止まった。

振り返る。

「野村」

「はい」

「この封筒のこと、誰にも言うな」

野村の表情が変わった。

「どうしてです?」

「わからん」

「わからないのに?」

「ああ」

真壁は言った。

「だから言うな」

3

捜査一課長の部屋には、知らない男がいた。

五十代半ば。

細身。

黒いスーツ。

髪には白いものが混じっている。

警察官ではない。

真壁にはすぐわかった。

警察官には独特の匂いがある。

服装ではない。

姿勢でもない。

他人を見るときの目だ。

警察官は、初対面の人間を見ると無意識に観察する。

靴。

手。

視線。

歩き方。

ポケット。

そういうものを瞬間的に見る。

しかし、その男は違った。

真壁の顔だけを見ていた。

「真壁」

捜査一課長の岸田が言った。

「座れ」

真壁は男の向かいに座った。

「こちらは?」

「東京から来られた」

岸田はそれ以上説明しなかった。

男が名刺を出した。

そこには、ある中央省庁の名前が記されていた。

真壁は名刺を見た。

そして男を見た。

「私に何か?」

男は答えず、一枚の写真をテーブルに置いた。

男性の遺体だった。

場所は室内。

ホテルのように見える。

「今朝、京都市内のホテルで発見されました」

男が言った。

「亡くなっているんですか」

「はい」

「事件?」

「京都府警は現時点では事件性は低いと見ています」

「なら、なぜ奈良県警の私に?」

男は別の写真を置いた。

遺体の右手付近だった。

床に数字が書かれている。

黒いインクのように見えた。

7・8

真壁は黙った。

「七月八日?」

男は頷かなかった。

「亡くなった人物をご存じですか」

三枚目の写真。

顔写真だった。

真壁は知らなかった。

六十代くらい。

眼鏡。

どこにでもいそうな男だった。

「知りません」

「高瀬浩二。六十三歳」

「職業は?」

男は一拍置いた。

「映像技術者です」

真壁の胸の奥で何かが動いた。

「映像?」

「テレビ局や制作会社から依頼を受け、映像解析などを行っていました」

真壁は男の目を見た。

「まさか」

「四年前の事件後、高瀬は複数の報道機関から依頼を受けています」

「何の?」

「安倍元首相銃撃事件の映像解析です」

部屋が静かになった。

エアコンの音だけが聞こえた。

真壁は先ほどの封筒を思い出していた。

一発目。

二発目。

岸田が言った。

「それだけじゃない」

「まだあるんですか」

岸田は机の上に透明な証拠袋を置いた。

中にはUSBメモリーが入っていた。

「高瀬の部屋から見つかった」

「中身は?」

「映像ファイルが一つ」

真壁は無意識に身を乗り出した。

「何の映像です?」

男が答えた。

「二〇二二年七月八日の大和西大寺駅前です」

真壁は息を吐いた。

それなら珍しくない。

当時、無数の映像が撮影されていた。

報道機関。

警察。

一般市民。

SNSにも大量に投稿された。

「それが何か?」

男は言った。

「この映像は、これまで公開されたどの映像とも一致しません」

真壁は眉を寄せた。

「撮影者が別なら当然でしょう」

「そういう意味ではありません」

男は真壁を見た。

「映像の中に、奇妙な人物が映っているんです」

「奇妙な人物?」

「はい」

「誰です」

男は少し迷った。

「わかりません」

「何をしている?」

「何も」

「何も?」

「ただ立っています」

真壁は苛立った。

「選挙演説ですよ。立っている人間なら何百人もいた」

「そうですね」

「なら何が奇妙なんです?」

男はテーブルの写真を一枚めくった。

そこには映像から切り出したと思われる静止画があった。

群衆。

安倍元首相。

警護員。

そして少し離れた場所に、一人の男がいる。

白いシャツ。

帽子。

顔はよく見えない。

「この人物です」

真壁は写真を見た。

「普通じゃないですか」

「一発目の直前です」

「それで?」

男は次の写真を出した。

ほぼ同じ構図。

ただし群衆の姿勢が変わっている。

一発目の直後なのだろう。

白いシャツの男は同じ場所にいた。

「これが一発目の直後」

三枚目。

人々が動き始めている。

男はまだ立っている。

「二発目の直前」

四枚目。

現場は混乱している。

白いシャツの男はいなくなっていた。

真壁は写真を順番に見た。

「だから?」

男が静かに言った。

「全員が音の方向を見ています」

真壁は写真に視線を戻した。

確かにそうだった。

最初の発射音。

群衆の多くが驚き、振り返ったり、音の方向を見たりしている。

警護員も反応している。

しかし。

白いシャツの男だけが違った。

彼は音の方向を見ていない。

安倍元首相も見ていない。

犯人も見ていない。

別の方向を見ている。

「どこを見てる?」

真壁が訊いた。

男は答えた。

「カメラです」

真壁の指が止まった。

「この映像を撮影している人物を見ています」

偶然。

まず浮かんだのは、その言葉だった。

人間はカメラを見る。

珍しいことではない。

「偶然でしょう」

「かもしれません」

「それだけで?」

「問題は次です」

男は最後の写真を置いた。

白いシャツの男の顔が拡大されていた。

画質は粗い。

だが、口元だけは見えた。

口が動いている。

何かを言っている。

「読唇術の専門家に見せました」

「何と言ってる?」

男は答えなかった。

「何と言っているんです」

真壁がもう一度訊いた。

男はゆっくり言った。

「『まだだ』」

真壁の背中に冷たいものが走った。

「いつ?」

「一発目の直後です」

「誰に言った?」

「わかりません」

「その人物は特定できている?」

「できていません」

「四年間も?」

「そもそも、この映像の存在が確認されたのが今朝です」

真壁は椅子にもたれた。

頭の中で、あの二行が蘇った。

あなたたちは、一発目を調べていない。

二発目だけを見ていた。

「真壁さん」

男が言った。

「どうしました?」

真壁は答えなかった。

「顔色が悪いですが」

「いや」

「何か心当たりが?」

真壁は一瞬迷った。

封筒のことを話すべきか。

当然、話すべきだ。

刑事として考えれば、それ以外の選択肢はない。

だが。

なぜか言えなかった。

封筒を置いた人物が、県警内部にいる可能性。

そして、その人物が真壁を名指しした理由。

まだわからない。

「ありません」

真壁は言った。

自分でも驚くほど自然な声だった。

その瞬間。

男の携帯電話が鳴った。

画面を確認し、立ち上がる。

「失礼」

部屋の隅へ行き、小声で話した。

三十秒ほどだった。

戻ってきた男の顔から血の気が引いていた。

「どうしました」

岸田が訊いた。

男は答えず、真壁を見た。

「高瀬のパソコンを解析していた捜査員からです」

「何か見つかった?」

「ファイルがありました」

「映像?」

「文章です」

男は携帯電話を見た。

「作成日時は、死亡する前日の午後十一時四十八分」

「内容は?」

男は画面を読み上げた。

「『もし私が死んだ場合、この記録を奈良県警の真壁修司に渡してほしい』」

真壁は言葉を失った。

岸田が真壁を見る。

「知り合いじゃないんだな?」

「知りません」

「本当に?」

「初めて聞いた名前です」

男はまだ携帯電話を見ていた。

「続きがあります」

真壁は嫌な予感がした。

今度の予感は、先ほどとは違った。

もっと具体的だった。

聞いてはいけない。

そんな気がした。

しかし男は読んだ。

「『真壁刑事なら気づくはずだ』」

そこで文章は一度切れていた。

「何に?」

真壁が訊いた。

男が画面をスクロールする。

そして言った。

「『犯人は、最初から二発撃つつもりだったのか』」

誰も言葉を発しなかった。

窓の外から蝉の声が聞こえた。

四年前と同じ夏だった。

4

午後七時。

真壁は一人で映像解析室にいた。

USBに残されていた映像を、すでに二十三回再生していた。

一発目。

停止。

巻き戻し。

再生。

停止。

二発目。

巻き戻し。

一発目。

二発目。

何度見ても、起きている出来事は同じだった。

過去は変わらない。

当然だ。

映像というものは、過去を保存する装置だ。

だが真壁は昔から、そうは思っていなかった。

映像が保存しているのは過去ではない。

「カメラが向いていた方向」だけだ。

フレームの外で何が起きていたか。

カメラの背後に誰がいたか。

撮影者がなぜそこに立っていたか。

映像は何も教えてくれない。

だから映像は証拠になる。

そして同時に、人を騙す。

二十三回目。

真壁は一発目の直前で停止した。

白いシャツの男。

画面の右端。

拡大する。

男の顔。

ぼやけている。

次のコマ。

男がカメラを見る。

次。

口が動く。

まだだ。

次。

群衆が動く。

次。

そして。

真壁は停止した。

「……ん?」

巻き戻す。

再生。

停止。

もう一度。

「違う」

思わず声が出た。

白いシャツの男を見ていたから気づかなかった。

その後ろ。

駅前のガラス。

そこに人影が反射している。

撮影者の姿だった。

この映像を撮った人物。

真壁は拡大した。

粗い。

男性か女性かさえ判別できない。

だが、一つだけわかった。

撮影者はスマートフォンを構えている。

そして。

その隣にもう一人いる。

真壁はさらに拡大した。

胸が速く打ち始めた。

「嘘だろ」

反射している二人。

一人は撮影者。

もう一人は――。

真壁は立ち上がった。

四年前。

あの日。

自分は現場にいなかった。

そう記憶している。

県警本部で別件の会議をしていた。

そのはずだった。

だが。

ガラスに映っている二人目の男。

輪郭。

立ち方。

そして左腕に巻かれた腕時計。

真壁は自分の左腕を見た。

四年前から使っている時計だった。

父親の形見。

世界に一つしかないものではない。

しかし文字盤の横に大きな傷がある。

映像の男の時計にも、同じ場所に白い筋が見えた。

電話が鳴った。

真壁は飛び上がりそうになった。

非通知。

しばらく見つめた。

出る。

「もしもし」

声はなかった。

「誰だ」

沈黙。

「誰なんだ」

やがて男の声がした。

低い声だった。

機械で加工されているようにも聞こえる。

『映像を見ましたね』

真壁の手に汗が滲んだ。

「誰だ」

『思い出しましたか』

「何を」

『あなたが、あの日そこにいたことを』

真壁は画面を見た。

ガラスに映る男。

「俺は……いなかった」

『そう記録されています』

「何が言いたい」

電話の向こうで、男が小さく息を吐いた。

『記録と記憶。どちらを信じますか』

「ふざけるな」

『高瀬さんも同じことを言いました』

真壁の表情が固まった。

「お前、高瀬を知ってるのか」

返事はない。

「高瀬を殺したのか?」

沈黙。

「答えろ!」

そして。

電話の向こうの男は、静かに言った。

『真壁さん。あなたはずっと勘違いしている』

「何をだ」

『問題なのは、二発目ではありません』

真壁は息を止めた。

男が続けた。

『一発目でもない』

「じゃあ何だ」

数秒の沈黙。

その数秒が、四年前のあの日と重なった。

最初の音。

人々が振り返る。

そして次の音。

男が言った。

『その間です』

電話が切れた。

真壁は携帯電話を耳に当てたまま動けなかった。

モニターには、一発目の直後の映像が停止している。

画面の中では、数百人の人間がそれぞれ違う方向を見ていた。

ある者は音の方向。

ある者は元首相。

ある者は犯人。

ある者は逃げようとしていた。

そして白いシャツの男だけが、カメラを見ている。

真壁は再生ボタンを押した。

映像が動き出す。

一秒。

二秒。

三秒。

真壁はその瞬間、初めて気づいた。

白いシャツの男は「まだだ」と言ったあと、右手を下げている。

その先。

フレームの外。

誰かに合図するように。

真壁は映像を止めた。

時計を見る。

午後七時二十八分。

そのとき、解析室のドアの下から何かが滑り込んできた。

白い紙だった。

真壁は立ち上がった。

廊下へ飛び出す。

誰もいない。

「おい!」

返事はない。

長い廊下。

蛍光灯。

無人だった。

真壁は部屋へ戻った。

床の紙を拾う。

そこには一行だけ印刷されていた。

《あなたは、なぜ自分が現場にいたことを忘れたのですか。》

真壁は紙を握ったまま立ち尽くした。

その背後で、モニターの映像が再び動き始めた。

触れていないのに。

一発目。

群衆が振り返る。

白いシャツの男がカメラを見る。

そして。

二発目。

画面が大きく揺れた。

暗転した。

その黒い画面に、真壁自身の顔が映っていた。

四年前の事件は終わっている。

少なくとも、日本中の人間がそう思っていた。

犯人は捕まり、裁判が行われ、判決も下された。

だが真壁は、この夜初めて理解した。

事件が終わったことと、

事件のすべてが明らかになったことは、

まったく別の話なのだ。

そして四年前の七月八日。

二つの銃声の間に存在した、ほんの数秒。

その短い空白の中に、

誰にも語られていないもう一つの物語が残されていた。

真壁はまだ知らない。

その空白を追うことが、

一人の死者の秘密だけではなく、

自分自身の四年間をひっくり返すことになるということを。

そして――

あの日、大和西大寺駅前にいた「白いシャツの男」は、

すでに死んでいる。

死亡したのは、

二〇二二年七月七日。

銃撃事件の、

前日だった。

(第2章に続く)

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