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西村京太郎
西村京太郎を模倣し、『JR福知山線脱線事故』を題材にした小説、「終着駅の迷宮」(ラビリンス)第五十五章・第五十六章
第五十五章 静寂の中の影 五月の空は澄み渡り、法廷の窓から射し込む光が木製の机を柔らかく照らしていた。だが、その明るさは決して人々の心を和らげるものではなく、むしろ現実の冷徹さを強調する役割を果たしていた。 福知山線脱線事故をめぐる長... -
西村京太郎
西村京太郎を模倣し、『JR福知山線脱線事故』を題材にした小説、「終着駅の迷宮」(ラビリンス)第五十三章・第五十四章
第五十三章 闇の中の証言 東京地方裁判所の法廷は、冬の午後の鈍色の光に包まれていた。傍聴席はすでに人で埋め尽くされ、報道陣のフラッシュが消灯を促されるたびに小さくざわめいた。裁判官の木槌が打たれ、空気が一瞬で張り詰める。 弁護人席に座... -
西村京太郎
西村京太郎を模倣し、『JR福知山線脱線事故』を題材にした小説、「終着駅の迷宮」(ラビリンス)第五十一章・第五十二章
第五十一章 閉ざされた環 東京地方裁判所の大法廷は、異様な緊張に包まれていた。 これまで幾度となく証言や証拠が提出され、世間の耳目を集めた「福知山線脱線事故裁判」も、いよいよ終盤に差し掛かろうとしていた。 法廷の壁に掛けられた時計が午... -
西村京太郎
西村京太郎を模倣し、『JR福知山線脱線事故』を題材にした小説、「終着駅の迷宮」(ラビリンス)第四十九章・第五十章
第四十九章 決定的証言 傍聴席の熱気は、連日の審理を経てなお冷めることを知らなかった。 福知山線脱線事故を巡る裁判は、ついに核心部分へと踏み込もうとしていた。検察はこれまで膨大な資料を積み上げ、企業体質の欠陥、そして個々の社員たちの証... -
西村京太郎
西村京太郎を模倣し、『JR福知山線脱線事故』を題材にした小説、「終着駅の迷宮」(ラビリンス)第四十七章・第四十八章
第四十七章 影の狭間 法廷の緊張は依然として続いていた。証人席に座る者たちの証言は、時に事実を鮮明にし、時に霧を濃くする。裁判官の冷ややかな声が室内に響くたび、記録係のペン先が紙を走る音が、まるで裁きの鐘のように重く刻まれていった。 ... -
西村京太郎
西村京太郎を模倣し、『JR福知山線脱線事故』を題材にした小説、「終着駅の迷宮」(ラビリンス)第四十五章・第四十六章
第四十五章 逆転の証言 大阪地方裁判所の大法廷。傍聴席は、開廷前から異様な熱気に包まれていた。記者席には全国紙やテレビ局の記者が陣取り、ペンを走らせる音やカメラのシャッター音が、抑えきれない期待と緊張を物語っていた。 この日の審理は... -
西村京太郎
西村京太郎を模倣し、『JR福知山線脱線事故』を題材にした小説、「終着駅の迷宮」(ラビリンス)第四十三章・第四十四章
第四十三章 見えざる糸 裁判の行方は、すでに新聞やテレビの報道を通じて全国民の注目を集めていた。だが、法廷の外でうごめく人間模様は、決して記事には載らない。傍聴席に座る人々の視線、遺族同士の囁き、弁護士や検察官の一瞬の表情の翳り――そうし... -
西村京太郎
西村京太郎を模倣し、『JR福知山線脱線事故』を題材にした小説、「終着駅の迷宮」(ラビリンス)第四十一章・第四十二章
第四十一章 崩れゆく均衡 裁判が佳境に差しかかると、法廷の空気はますます重く張り詰めていった。証言台に立つ人々はそれぞれの立場を守ろうとし、検察と弁護側は一言一句の矛盾を見逃すまいと身を乗り出す。傍聴席では記者が鉛筆を走らせ、遺族の表情は... -
西村京太郎
西村京太郎を模倣し、『JR福知山線脱線事故』を題材にした小説、「終着駅の迷宮」(ラビリンス)第三十九章・第四十章
第三十九章 「法廷に響く声」 神戸地方裁判所の法廷は、いつになく重苦しい空気に包まれていた。窓から射し込む光は、秋の終わりを告げるように白く冷たい。傍聴席には記者たちが陣取り、事件の行方を固唾をのんで見守っている。 福知山線脱線事故から... -
西村京太郎
西村京太郎を模倣し、『JR福知山線脱線事故』を題材にした小説、「終着駅の迷宮」(ラビリンス)第三十七章・第三十八章
第三十七章 沈黙の証言 傍聴席に漂う空気は、前日までとは明らかに違っていた。裁判が進むにつれ、証言は核心に近づき、傍聴人たちの視線も鋭さを増していた。刑事部長の今西は、前列からその様子を注視していた。彼の耳に届くのは証人の声だけでなく、...