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佐藤愛子
佐藤愛子を模倣し、野坂昭如の「火垂るの墓」時代を題材にした完全オリジナル長編小説『灰の味――或る少年の季節』第八十四章・第八十五章
第八十四章 灯の重さ──影が量らなかった夕方 夕方、少年は胸の奥に「重さ」が戻ってきていることに気づいた。 重たい、と言ってしまえばそれまでだが、 それは鉛のように沈む重さではなく、 持ち上げなくても落ちない重さだった。 呼吸は相変わ... -
佐藤愛子
佐藤愛子を模倣し、野坂昭如の「火垂るの墓」時代を題材にした完全オリジナル長編小説『灰の味――或る少年の季節』第八十二章・第八十三章
第八十二章 灯の居残り──影が席を温め続けた朝 朝、少年は目を覚ました瞬間に、胸の奥で「居残る」という決断が行われた気配を感じた。 昨夜、戻ってきた灯は、鳩尾のあたりで静かに呼吸をしていたが、今朝はそれよりも深く、骨の内側に腰を落ち着け... -
佐藤愛子
佐藤愛子を模倣し、野坂昭如の「火垂るの墓」時代を題材にした完全オリジナル長編小説『灰の味――或る少年の季節』第八十章・第八十一章
第八十章 灯の呼び名──影が兄をやめさせなかった朝 翌朝、少年は、胸の内側で「誰かに名前を呼ばれた」ような気配で目を覚ました。 耳には何も聞こえない。 布団の上には誰もいない。 だが、鳩尾のあたりで小さく灯が揺れ、その揺れ方が、 まる... -
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佐藤愛子を模倣し、野坂昭如の「火垂るの墓」時代を題材にした完全オリジナル長編小説『灰の味――或る少年の季節』第七十八章・第七十九章
第七十八章 灯が試しに座った昼──影が何も言わなかった 翌朝、少年は胸の奥の静けさで目を覚ました。 昨日まで、鳩尾のあたりでこまごまと揺れていた灯が、 その朝に限って、ほとんど揺れを見せなかったのだ。 消えたのではない。 呼吸の底に、... -
佐藤愛子
佐藤愛子を模倣し、野坂昭如の「火垂るの墓」時代を題材にした完全オリジナル長編小説『灰の味――或る少年の季節』第七十六章・第七十七章
第七十六章 灯をゆだねる足──影がそっと前へ押した 翌朝、少年はいつもより遅く目を覚ました。 背中にはまだ、影の背もたれの感触が残っている。 胸の奥では、隣に座った灯が、 昨夜と同じ姿勢のまま、 しかしどこか――前のめりになって揺れてい... -
佐藤愛子
佐藤愛子を模倣し、野坂昭如の「火垂るの墓」時代を題材にした完全オリジナル長編小説『灰の味――或る少年の季節』第七十四章・第七十五章
第七十四章 灯が隣に座った夕方──影が背もたれになった 翌朝、少年が目を開ける前に、 胸の奥で「こつん」と、 何かが自分の肩に当たる感覚があった。 夢だろうと最初は思った。 だが、目を閉じたまま耳を澄ますと、 胸の奥の空席のあたりか... -
佐藤愛子
佐藤愛子を模倣し、野坂昭如の「火垂るの墓」時代を題材にした完全オリジナル長編小説『灰の味――或る少年の季節』第七十二章・第七十三章
第72章 灯の欲──影が座りたがった夜 息の灯を抱えた翌朝、 少年は胸の奥で“揺れ方の変化”を感じた。 昨日までの灯は、 息だけで、沈黙と匂いを抱えていた。 しかし今朝の灯は、 胸の空席に 寄ろうとしている。 寄りたい。 座りたい。 ... -
佐藤愛子
佐藤愛子を模倣し、野坂昭如の「火垂るの墓」時代を題材にした完全オリジナル長編小説『灰の味――或る少年の季節』第七十章・第七十一章
第70章 灯の匂い──影が胸の奥で腐りかける 沈黙が続く三日目の朝、少年は胸に違和感を感じて飛び起きた。 空席が“腐りかけの匂い”を放っていたのだ。 腐敗ではない。 敗れた布の匂いでもない。 人と灯の間にこびりついた、 影の生臭さだった... -
佐藤愛子
佐藤愛子を模倣し、野坂昭如の「火垂るの墓」時代を題材にした完全オリジナル長編小説『灰の味――或る少年の季節』第六十八章・第六十九章
第68章 待つ手の生活──灯が来ないまま温度だけが残る 翌朝、少年が胸に手を当てても、 灯は相変わらず座らなかった。 整えられた空席の前に、 ひっそりと佇んでいるのに、 座ろうとはしない。 節子の灯は奥の部屋で眠るように揺れ、 呼吸を... -
未分類
佐藤愛子を模倣し、野坂昭如の「火垂るの墓」時代を題材にした完全オリジナル長編小説『灰の味――或る少年の季節』第六十七章・第六十八章
第66章 灯のための整え──影は埃を払う指になった 翌朝、少年は胸の奥に“手入れの欲求”を感じた。 迎えの灯が来る気配がしているのに、 胸の空席がどこか乱れているように思えた。 節子の灯が奥の部屋で、 うっすらと笑っている。 笑いながら...