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西村京太郎を模倣し、『JR福知山線脱線事故』を題材にした小説、「終着駅の迷宮」(ラビリンス)第四十五章・第四十六章
第四十五章 逆転の証言 大阪地方裁判所の大法廷。傍聴席は、開廷前から異様な熱気に包まれていた。記者席には全国紙やテレビ局の記者が陣取り、ペンを走らせる音やカメラのシャッター音が、抑えきれない期待と緊張を物語っていた。 この日の審理は... -
西村京太郎を模倣し、『JR福知山線脱線事故』を題材にした小説、「終着駅の迷宮」(ラビリンス)第四十三章・第四十四章
第四十三章 見えざる糸 裁判の行方は、すでに新聞やテレビの報道を通じて全国民の注目を集めていた。だが、法廷の外でうごめく人間模様は、決して記事には載らない。傍聴席に座る人々の視線、遺族同士の囁き、弁護士や検察官の一瞬の表情の翳り――そうし... -
西村京太郎を模倣し、『JR福知山線脱線事故』を題材にした小説、「終着駅の迷宮」(ラビリンス)第四十一章・第四十二章
第四十一章 崩れゆく均衡 裁判が佳境に差しかかると、法廷の空気はますます重く張り詰めていった。証言台に立つ人々はそれぞれの立場を守ろうとし、検察と弁護側は一言一句の矛盾を見逃すまいと身を乗り出す。傍聴席では記者が鉛筆を走らせ、遺族の表情は... -
西村京太郎を模倣し、『JR福知山線脱線事故』を題材にした小説、「終着駅の迷宮」(ラビリンス)第三十九章・第四十章
第三十九章 「法廷に響く声」 神戸地方裁判所の法廷は、いつになく重苦しい空気に包まれていた。窓から射し込む光は、秋の終わりを告げるように白く冷たい。傍聴席には記者たちが陣取り、事件の行方を固唾をのんで見守っている。 福知山線脱線事故から... -
西村京太郎を模倣し、『JR福知山線脱線事故』を題材にした小説、「終着駅の迷宮」(ラビリンス)第三十七章・第三十八章
第三十七章 沈黙の証言 傍聴席に漂う空気は、前日までとは明らかに違っていた。裁判が進むにつれ、証言は核心に近づき、傍聴人たちの視線も鋭さを増していた。刑事部長の今西は、前列からその様子を注視していた。彼の耳に届くのは証人の声だけでなく、... -
西村京太郎を模倣し、『JR福知山線脱線事故』を題材にした小説、「終着駅の迷宮」(ラビリンス)第三十五章・第三十六章
第三十五章 暗闇に沈む証言 大阪地方裁判所の法廷は、梅雨の湿気を含んだ空気で重く淀んでいた。天井に並ぶ蛍光灯は白々と光り、傍聴席を満たす人々の顔を青白く照らし出す。そのなかで、被告席に座る男――山崎は、硬直した表情を崩さずに前を見据えてい... -
西村京太郎を模倣し、『JR福知山線脱線事故』を題材にした小説、「終着駅の迷宮」(ラビリンス)第三十三章・第三十四章
第三十三章 法廷に立つ影 四月の曇天が、まるで灰色のカーテンのように大阪の街を覆っていた。 地方裁判所の玄関前には、朝から報道陣と傍聴希望者の長蛇の列ができていた。人々の視線は一様に、この日初めて公開される福知山線脱線事故に関連する刑... -
西村京太郎を模倣し、『JR福知山線脱線事故』を題材にした小説、「終着駅の迷宮」(ラビリンス)第三十一章・第三十二章
第三十一章 灰色の迷路 春の午後、東京地方裁判所の廊下には張り詰めた空気が漂っていた。鉄製のドアが静かに閉じられ、傍聴人たちのざわめきはやや遠のいていった。これまで長きにわたって続いた公判も、いよいよ終盤に差しかかろうとしていた。裁判長... -
西村京太郎を模倣し、『JR福知山線脱線事故』を題材にした小説、「終着駅の迷宮」(ラビリンス)第二十九章・第三十章
第二十九章 取り残された真実 大阪地方裁判所の法廷に、午後の柔らかな光が斜めに差し込んでいた。 窓越しに射し込む陽射しは、そこに集う人々の顔に微妙な陰影を落とし、傍聴席に座る遺族たちの表情をいっそう沈痛に見せていた。 裁判は終盤を迎え... -
西村京太郎を模倣し、『JR福知山線脱線事故』を題材にした小説、「終着駅の迷宮」(ラビリンス)第二十七章・第二十八章
第二十七章 虚像の終焉 東京地方裁判所。 秋雨に濡れた法廷の窓越しに、どんよりとした雲が垂れ込めていた。裁判は大詰めを迎えていた。JR福知山線脱線事故をめぐる一連の真相が、いよいよ司法の場で断罪されるのである。 傍聴席は、遺族、報道関係...