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西村京太郎
西村京太郎を模倣し、『JR福知山線脱線事故』を題材にした小説、「終着駅の迷宮」(ラビリンス)第十五章・第十六章
第十五章 緊迫の面談 東京・霞が関。午後三時。 警察庁捜査一課の一室で、十津川警部と亀井刑事は、JR西日本の元安全管理部長・高瀬雅人の事情聴取に臨んでいた。 高瀬は六十代前半、痩身で神経質そうな顔立ちをしている。白髪交じりの髪は几帳面に... -
西村京太郎
西村京太郎を模倣し、『JR福知山線脱線事故』を題材にした小説、「終着駅の迷宮」(ラビリンス)第十三章・第十四章
第十三章 暗転 十津川警部が京都府警の会議室に入ったとき、空気は張り詰めていた。長机を囲むのは、府警捜査一課、鉄道警察隊、警視庁捜査一課の合同チーム。机の中央には、事故車両のブレーキ制御ログ、運行管理サーバーの復元データ、そして数枚の写... -
西村京太郎
西村京太郎を模倣し、『JR福知山線脱線事故』を題材にした小説、「終着駅の迷宮」(ラビリンス)第十一章・第十二章
第十一章 告発の連鎖 東京・丸の内の高層ビル群の中にひっそりと構える、国土交通省鉄道局の一室。 窓際のデスクで書類を整理していた課長補佐・木暮正志は、ふと自分のスマートフォンが震えるのに気づいた。画面には「非通知」の表示。嫌な予感が胸... -
西村京太郎
西村京太郎を模倣し、『JR福知山線脱線事故』を題材にした小説、「終着駅の迷宮」(ラビリンス)第九章・第十章
第九章 封鎖網 初秋の朝。東京・警視庁捜査一課の会議室では、十津川警部を中心に、事故捜査本部の全員が集められていた。 壁には大きなホワイトボードが立てられ、そこには事故からこれまでの時系列、関係者の顔写真、接触記録がぎっしりと貼られて... -
西村京太郎
西村京太郎を模倣し、『JR福知山線脱線事故』を題材にした小説、「終着駅の迷宮」(ラビリンス)第七章・第八章
第七章 企業の中枢 大阪本社の高層ビルは、朝の日差しを跳ね返していた。交通網の要を担う企業の本拠地は、まるでその責任の重さを象徴するかのように、巨大で無機質だった。 十津川と亀井は、社員通用口から静かに入館し、応接室へと通された。 「副... -
西村京太郎
西村京太郎を模倣し、『JR福知山線脱線事故』を題材にした小説、「終着駅の迷宮」(ラビリンス)第五章・第六章
第五章 記録の闇 大阪・弁天町、JR西日本本社の一角。 八階にある「技術戦略本部」は、事故発生以来、社内でも極端に閉ざされた場所と化していた。 重たい扉を開けた十津川警部と亀井刑事は、受付職員に面会を告げた。 「本部長代理・藤原浩一氏に、先日... -
西村京太郎
西村京太郎を模倣し、『JR福知山線脱線事故』を題材にした小説、「終着駅の迷宮」(ラビリンス)第三章・第四章
第三章 十津川、尼崎へ 事故から三日後、四月二十八日午前。 JR尼崎駅南口のロータリーでは、数日前の騒然とした雰囲気がいくぶん和らぎ、規制線もやや後退していた。だが、鉄柵の向こう、マンションへと突っ込んだ一両目の残骸は依然として取り除か... -
西村京太郎
西村京太郎を模倣し『JR福知山線脱線事故』を題材にした小説「終着駅の迷宮」(ラビリンス)プロローグ・第一章・第二章
プロローグ —揺れる車窓の果てに— 2005年4月25日午前9時18分。 陽射しはやわらかく、春の光が窓ガラスに映えていた。JR福知山線5418M快速電車は、日常の喧噪に取り込まれたまま、宝塚から尼崎へと向かっていた。 七両編成の電車は、定刻よりわずかに... -
松本清張
松本清張を模倣し「地下鉄サリン事件」を題材にした小説『曇天の螺旋』第九十九章・第百章(完結編)
第九十九章 無記の都市 ──西暦2025年7月。東京都千代田区。 永田町の片隅、かつて国家中枢を見下ろすように建てられた内閣情報局別館の地下にて、ひとつの会議が開かれていた。 議題は一つ──“記録社会の終焉と、それに続く都市管理体制の再構築”。 会議に... -
松本清張
松本清張を模倣し「地下鉄サリン事件」を題材にした小説『曇天の螺旋』第九十七章・第九十八章
第九十七章 都市の境界線 防災庁・第七分局監視室── 仄暗いモニター室の中で、宗像副室長は背筋を伸ばしたまま、無言のまま画面を見つめていた。 モニターには、明らかに“存在している”のに、“記録として保存されない”人々の姿が、断続的に映し出されてい...