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遠藤周作
遠藤周作を模倣し、『旧統一教会』を題材にした小説、「沈黙の祈祷(きとう)―第二部・暗影の果て―」プロローグ
プロローグ ――銃声の残響 その日、夏の陽は異様に眩しかった。 炎天下の舗道に、白い線がゆらめいていた。 誰かの叫び声が、遠くのスピーカーから割れて聞こえる。 ――次の瞬間、音が消えた。 世界が一度、息を止めたようだった。 それは、ひ... -
遠藤周作
遠藤周作を模倣し、『旧統一教会』を題材にした小説、「沈黙の祈祷(きとう)」第十章
第十章 沈黙の果て 春の雨が細く降っていた。 窓を覆う水の糸が、街灯の光をほどいては結び直し、夜の端をやわらかく濡らしていく。杉本は、編集部の奥でひとり資料の束をめくりながら、濡れた傘から垂れる雫の音を聞いていた。 机の端には、母の古... -
遠藤周作
遠藤周作を模倣し、『旧統一教会』を題材にした小説、「沈黙の祈祷(きとう)」第八章・第九章
第八章 赦しの条件 冬の終わり、雪混じりの雨が東京の街を薄く濡らしていた。 杉本は傘を持たず、灰色の雲を仰ぎながら歩いた。 記者を三十年近くやってきたが、今ほど「言葉の重さ」を測りかねた時期はなかった。 記事は読まれ、議論を呼び、そ... -
遠藤周作
遠藤周作を模倣し、『旧統一教会』を題材にした小説、「沈黙の祈祷(きとう)」第七章
第七章 灯の揺れる場所 冬の空気は澄み、音を小さくする。 杉本が編集部のドアを押したとき、室内のざわめきは予想より静かだった。 コーヒーの匂い、プリンターの規則的な駆動音、電話の短いコール。 何も変わらないはずの日常が、記事一本で少... -
遠藤周作
遠藤周作を模倣し、『旧統一教会』を題材にした小説、「沈黙の祈祷(きとう)」第五章・第六章
第五章 赦しの声 夜明け前の東京は、まるで誰かの息を潜めたように静かだった。 ビルの谷間に薄い霧が漂い、街灯がその中にぼんやりと沈んでいる。 杉本はホテルの窓から外を見つめながら、母の残したノートを手にしていた。 そのページには、震... -
遠藤周作
遠藤周作を模倣し、『旧統一教会』を題材にした小説、「沈黙の祈祷(きとう)」第三章・第四章
第三章 裂け目の祈り 十二月の東京は、どこか異様に明るかった。 街の灯が、過剰なまでに人の孤独を覆い隠していた。 その光の中を、杉本はコートの襟を立てながら歩いていた。吐く息は白く、彼の歩調はどこかためらいがちだった。 あの宗教団体―... -
遠藤周作
遠藤周作を模倣し、『旧統一教会』を題材にした小説、「沈黙の祈祷(きとう)」第一章・第二章
第一章 光を追う者 風が、川の方から吹き上げてきた。冬の始まりの風は、東京郊外の住宅地の屋根を撫でながら、古い木造家屋の壁を震わせる。 山名(やまな)は、玄関の扉を閉めてから、しばらくその風の音を聴いていた。冷たい風の中に、なにかが混... -
西村京太郎
西村京太郎を模倣し、『JR福知山線脱線事故』を題材にした小説、「終着駅の迷宮」(ラビリンス)第百章・最終章
第百章 終着駅の灯 1 神戸駅の朝 冬の朝。神戸駅のホームに立つ西村の頬を、冷たい潮風がかすめた。 遠くに六甲の稜線、ホームの時計は午前七時三十五分を指している。電車が発車するたびに、金属音が低く響いた。 改札の向こうには、昨夜まで人... -
西村京太郎
西村京太郎を模倣し、『JR福知山線脱線事故』を題材にした小説、「終着駅の迷宮」(ラビリンス)第九十九章
第九十九章 出口の設計者 1 薄曇りの高架下 午前九時、東京の空は金属を磨いたように鈍く、JRの高架下に規則的な轟音が落ちていた。西村は紙袋を片手に、古い喫茶店のドアを押した。カップの縁に口紅が残るほどの年代物の店で、テーブルは磨かれすぎ... -
西村京太郎
西村京太郎を模倣し、『JR福知山線脱線事故』を題材にした小説、「終着駅の迷宮」(ラビリンス)第九十七章・第九十八章
第九十七章 影の同伴者 1 午前の庁舎 霞が関の朝は、ガラスの壁に冬の光を跳ね返していた。庁舎の廊下を歩く西村の靴音が、規則正しく響く。 会議室にはすでに若手検事と鑑定家・三輪がいた。机の上には、朱書きと鉛筆の二つの写しが並べられ、赤と...