佐藤愛子– category –
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佐藤愛子
佐藤愛子を模倣し、野坂昭如の「火垂るの墓」時代を題材にした完全オリジナル長編小説『灰の味――或る少年の季節』第百六十八章・第百六十九章
第百六十八章 灯の間置き──影が「置いたまま動かない時間」を朝に残した朝 朝、少年は時間を片づけなかった。 昨日の続きが、机の端に残っている。 紙切れ、 冷えた器、 読みかけの文字。 片づければ、朝は整う。 整えば、始まりがはっきりする。... -
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佐藤愛子を模倣し、野坂昭如の「火垂るの墓」時代を題材にした完全オリジナル長編小説『灰の味――或る少年の季節』第百六十六章・第百六十七章
第百六十六章 灯の置き名──影が「呼ばない呼称」を夜に残した夜 夜、少年は名を呼ばなかった。 呼べば、返事が来る。 返事が来れば、関係が確定する。 確定すれば、役割が生まれる。 役割が生まれると、守る線が引かれる。 線が引かれると、... -
佐藤愛子
佐藤愛子を模倣し、野坂昭如の「火垂るの墓」時代を題材にした完全オリジナル長編小説『灰の味――或る少年の季節』第百六十四章・第百六十五章
第百六十四章 灯の置き影──影が「追わない形」を昼に残した昼 昼、少年は影を踏まなかった。 踏めば、遊びになる。 遊びになれば、勝ち負けが生まれる。 勝ち負けが生まれると、 影は形を持ちすぎる。 形を持ちすぎた影は、 やがて人を引き... -
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佐藤愛子を模倣し、野坂昭如の「火垂るの墓」時代を題材にした完全オリジナル長編小説『灰の味――或る少年の季節』第百六十二章・第百六十三章
第百六十二章 灯の余白灯──影が「点けない明るさ」を夜に預けた夜 夜、少年は灯りを点けなかった。 暗い。 だが闇ではない。 窓の隙から月の白が入り、 遠くの家の気配が壁に薄く映る。 点ければ、はっきりする。 はっきりすれば、選択が増... -
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佐藤愛子を模倣し、野坂昭如の「火垂るの墓」時代を題材にした完全オリジナル長編小説『灰の味――或る少年の季節』第百六十章・第百六十一章
第百六十章 灯の見送り窓──影が「閉めない視線」を朝へ残した朝 朝、少年は窓を閉めなかった。 風が入る。 埃も入る。 鳥の声も、遠い足音も入る。 閉めれば、静かになる。 静かになれば、整う。 整えば、安心が来る。 だが安心は、外を... -
佐藤愛子
佐藤愛子を模倣し、野坂昭如の「火垂るの墓」時代を題材にした完全オリジナル長編小説『灰の味――或る少年の季節』第百五十八章・第百五十九章
第百五十八章 灯の仮止め──影が「外さない結び」を夕方に預けた夕方 夕方、少年は結びを固めなかった。 紐は解けないように結べる。 力を込めれば、ほどけない。 ほどけない結びは、安心を連れてくる。 だが安心は、外す手間を隠す。 外す手... -
佐藤愛子
佐藤愛子を模倣し、野坂昭如の「火垂るの墓」時代を題材にした完全オリジナル長編小説『灰の味――或る少年の季節』第百五十六章・第百五十七章
第百五十六章 灯の間欠──影が「続けない勇気」を朝へ手渡した朝 朝、少年は続けなかった。 昨日の続きを、そのまま引き受けなかった。 引き受ければ、楽だ。 楽は、速い。 速いと、形が固まる。 固まると、外れたものが目立つ。 目立つと、... -
佐藤愛子
佐藤愛子を模倣し、野坂昭如の「火垂るの墓」時代を題材にした完全オリジナル長編小説『灰の味――或る少年の季節』第百五十四章・第百五十五章
第百五十四章 灯の渡り板──影が「踏み切らない勇気」を置いた夕方 夕方、少年は渡り板の前で立ち止まった。 川というほどではない。 溝というほど浅くもない。 雨水が集まって、細く流れている。 その上に、一本の板が渡してある。 踏めば向... -
佐藤愛子
佐藤愛子を模倣し、野坂昭如の「火垂るの墓」時代を題材にした完全オリジナル長編小説『灰の味――或る少年の季節』第百五十二章・第百五十三章
第百五十二章 灯の呼吸孔──影が「塞がない穴」を残した朝 朝、少年は壁の小さな穴に気づいた。 瓦礫の陰、崩れた土壁の際に、指一本ほどの穴がある。 風が、そこを通る。 通るといっても、強くはない。 音を立てず、 匂いだけを運び、 温度... -
佐藤愛子
佐藤愛子を模倣し、野坂昭如の「火垂るの墓」時代を題材にした完全オリジナル長編小説『灰の味――或る少年の季節』第百五十章・第百五十一章
第百五十章 灯の縁石──影が「止まらない流れ」を許した夕方 夕方、少年は縁石に腰を下ろした。 座ったが、止まらなかった。 止まらなかったのは、立ち上がらなかったからではない。 流れを切らなかったからだ。 道の端にある縁石は、歩行を止め...