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佐藤愛子
佐藤愛子を模倣し、野坂昭如の「火垂るの墓」時代を題材にした完全オリジナル長編小説『灰の味――或る少年の季節』第二章・第三章
第二章 港の背骨 朝は、焼け跡にだけ公平だった。 誰が泣こうが、誰が怒鳴ろうが、朝は勝手に薄ら明るくなる。都合は聞かない。意思を尊重する気もない。太陽はこの国で一番冷淡なものだ。気象庁は彼を讃え過ぎている。あれは称える対象ではない。た... -
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佐藤愛子を模倣し、野坂昭如の「火垂るの墓」時代を題材にした完全オリジナル長編小説『灰の味――或る少年の季節』プロローグ・第一章
プロローグ「私の見た町」 この町は、いまはきれいに舗装され、犬も神妙に散歩している。昔は土が剥き出しで、雨が降るとすぐ泥になった。泥は正直で、ついた足跡のとおりに人が生きた。戦があった年、空から火が降って、家は軽く燃え、親は重く沈んだ。...