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上田秀人
上田秀人を模倣し「島原・天草の乱」を題材にした小説『暁の果断 ―島原乱記―』第七章
第七章 沈黙の果て 江戸の町は、再び立ち上がっていた。 大地震によって崩れた家々も、数か月のうちに再建の槌音が響きはじめ、 焼け跡には仮の茶屋が並び、職人の掛け声が往来を埋めていた。 人は滅びても、町は生きる。 そして、その町を動か... -
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上田秀人を模倣し「島原・天草の乱」を題材にした小説『暁の果断 ―島原乱記―』第五章・第六章
第五章 灰の記憶 戦は終わった。 だが、風はまだ焦げた匂いを運んでいた。 原城の跡には、瓦礫と灰と、焼け落ちた祈祷書だけが残されている。 あれほど信仰に燃えていた者たちは、いまや沈黙の中に消え去った。 海鳴りが、かつての祈りの残響の... -
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上田秀人を模倣し「島原・天草の乱」を題材にした小説『暁の果断 ―島原乱記―』第三章・第四章
第三章 沈黙の策謀 有馬の風は、まだ冬の冷たさを残していた。 その風を切るように、一人の若き男が丘の上に立っている。 天草四郎――名を益田時貞という。年は十六。 だが、その瞳には年齢を超えた深い憂いと、神に選ばれた者の静かな確信があっ... -
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上田秀人を模倣し「島原・天草の乱」を題材にした小説『暁の果断 ―島原乱記―』第一章・第二章
第一章 密告の村 ――寛永十四年、肥前・島原。 冬の潮風は重く、土の匂いと湿った煙の臭気を含んで吹き抜けた。 かつてキリシタン大名・有馬晴信の治めた地は、今や松倉勝家の圧政のもとに呻吟していた。 五人組による監視、踏絵による信仰調査、...
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