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山岡荘八を模倣した小説『昭和の嵐 ー東條英機伝ー』第十一章 歴史の法廷・最終章 記憶のかたち
第十一章 歴史の法廷 昭和が終わり、平成が始まり、さらに令和の世が訪れてもなお、 一人の男の名は、歴史の彼方から人々の口に上ることがある。 東條英樹—— 彼は、戦争を導いた張本人として語られ、 また一方では、国家の犠牲者、あるいは忠臣... -
山岡荘八を模倣した小説『昭和の嵐 ー東條英機伝ー』第九章 灰と鉄と・第十章 最後の命令
第九章 灰と鉄と 昭和十八年夏、東京の空は鉛色に沈んでいた。 遠雷のような音が響き、誰かが空を見上げて呟いた。 「B二十九……来るぞ」 それは、太平洋戦争開戦から二年。 日本本土に、ついに戦火が及び始めたことを告げる、恐るべき兆しだった... -
山岡荘八を模倣した小説『昭和の嵐 ー東條英機伝ー』第七章 開戦の檻・第八章 勝利の陰影
第七章 開戦の檻 昭和十六年十一月。 東京の空は灰色の雲に覆われ、時折小雨が石畳を濡らしていた。 総理大臣官邸の執務室にて、東條英樹は長机に置かれた分厚い書類に目を通していた。 その書類の一枚には、「米国国務省提出対日覚書」と記され... -
山岡荘八を模倣した小説『昭和の嵐 ー東條英機伝ー』第五章 軍務局の塔・第六章 政軍の断層
第五章 軍務局の塔 昭和八年、晩秋。 東條英樹は、重い扉を押し開け、再び東京の霞ヶ関に戻ってきた。 関東軍憲兵隊長としての任を終えた彼に与えられた新たな任務は、陸軍省軍務局の中枢であった。 軍務局——それは帝国陸軍の頭脳、作戦・人事・... -
山岡荘八を模倣した小説『昭和の嵐 ー東條英機伝ー』第三章 参謀の眼・第四章 満洲の風
第三章 参謀の眼 大正三年、春。 東京市麹町、陸軍大学校の門前に、ひとりの青年将校が姿を現した。黒革の軍靴を鳴らし、軍帽の庇を低くかぶり、その背筋は直線のごとくに伸びていた。 ——東條英樹、三十一歳。 既に少佐の階級を帯びていた彼は、... -
山岡荘八を模倣した小説『昭和の嵐 ー東條英機伝ー』第一章 杉の香かおる幼時・第二章 士官たるの道
第一章 杉の香かおる幼時 明治十一年七月三十日、東京市麻布區飯倉町——。 蝉時雨が降る夏の午後、陸軍大学校教官・東條賢藏中佐の屋敷に、ひとりの産声が高らかに響いた。長男である。 「おぎゃあ——おぎゃあ……」 母・東條やゑが汗にまみれながらも安...
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