司馬遼太郎– category –
-
司馬遼太郎を模倣した小説『蒼穹の翼ー山本五十六伝ー』最終章
第十八章 誰が戦争を終わらせるのか 昭和十八年四月十八日。 帝国海軍は、ひとつの星を失った。 “連合艦隊司令長官 山本五十六、大東亜戦争戦没” 新聞の見出しは、簡潔だった。 だがその背後にある“真実”を、民衆は知らなかった。 彼が、ど... -
司馬遼太郎を模倣した小説『蒼穹の翼ー山本五十六伝ー』第十五章・第一六章
第十六章 静かなる異端 「……講和を、探るべきだと思うのだ」 ラバウルの夕暮れ。 五十六は、古参の参謀・宇垣纒中将に、ぽつりと呟いた。 それは、明確な命令でもなければ、公式な戦略でもない。 ただの「私語」だった。 「戦争というものは... -
司馬遼太郎を模倣した小説『蒼穹の翼ー山本五十六伝ー』第十四章
第十四章|沈黙の前線 昭和十七年九月。 ソロモンの海に、乾いた焦げたような風が吹いていた。 山本五十六は、ラバウルにいた。 連合艦隊司令長官たる者が、司令部をトラック諸島から南下させるなど、常識ではあり得なかった。 だが、彼は、己の... -
司馬遼太郎を模倣した小説『蒼穹の翼ー山本五十六伝ー』第十二章・第十三章
第十二章 回帰 昭和十七年六月、大和の艦上。 夜。海上は静まりかえり、重い雲が月を覆い隠していた。 艦のかすかな震動だけが、眠らぬ鋼鉄の躯体に命を与えている。 連合艦隊司令長官、山本五十六は、長官公室の椅子に沈み、机上に広げた海図を... -
司馬遼太郎を模倣した小説『蒼穹の翼ー山本五十六伝ー』第十章・第十一章
第十章 運命の潮流 昭和十七年(一九四二年)、春。 日本軍は、南方作戦で連戦連勝を重ねていた。 マレー、シンガポール、フィリピン、インドネシア…… かつて「無敵」と謳われた欧米の植民地は、次々と陥落した。 国民は沸き返り、政府も... -
司馬遼太郎を模倣した小説『蒼穹の翼ー山本五十六伝ー』第八章・第九章
第八章 暁の雷鳴 昭和十六年(一九四一年)、秋。 山本五十六は、連合艦隊司令長官として、 新たな作戦計画に取り組んでいた。 それは、かつてない大胆な作戦だった。 ――真珠湾奇襲。 アメリカ太平洋艦隊の主力を、一挙に叩く。 それに... -
司馬遼太郎を模倣した小説『蒼穹の翼ー山本五十六伝ー』第六章・第七章
第六章 空母の夢 軍縮の時代、 日本海軍は、静かに、だが確実に変貌を遂げつつあった。 大艦巨砲主義の終焉。 それを誰よりも早く予見し、 新たな戦い方を模索していた男こそ、山本五十六であった。 彼は、航空部門の要職に就き、 空... -
司馬遼太郎を模倣した小説『蒼穹の翼ー山本五十六伝ー』第四章・第五章
第四章 空への眼 大正三年(一九一四年)、ヨーロッパで大戦が始まった。 世界を巻き込む火薬庫――第一次世界大戦である。 日本もまた、日英同盟を口実に、ドイツに対して宣戦布告した。 山本五十六は、連合艦隊所属の巡洋艦「磐手(いわて)」に... -
司馬遼太郎を模倣した小説『蒼穹の翼 ―山本五十六伝―』第二章・第三章
第二章 日露の嵐 明治三十七年(一九〇四年)、日本はロシア帝国との開戦を決意した。 大国ロシアとの戦争。それは、東洋の小国にとって、無謀とも言える挑戦だった。 五十六は、少尉候補生から少尉に任官され、第一艦隊に配属された。 配属先は... -
司馬遼太郎を模倣した小説『蒼穹の翼 ―山本五十六伝―』第一章
第一章 新潟の空 越後の冬は長い。 白く分厚い雲が山間に垂れこめ、町の屋根という屋根にはどっしりと雪が積もっていた。明治十七年の冬、新潟県長岡。凍てついた空気のなかで、山本五十六は生まれた。 高野家は、かつて長岡藩の下級藩士だった家柄...
1